Dengさんに聞く:HIMITSUBAKOはどうやって生まれたの
― 日常の“ちょっと困った”から始まったアイデア

きっかけは、
仕事の中でも、生活の中でも、
「すぐ保存したい」
「すぐ見たい」
「すぐ共有したい」というリアルなニーズ
日常のちょっとした不便から、世界を変えるIT製品は生まれます。今回は、ゼロからHIMITSUBAKOを自社開発する会社BPSを創った創業者Dさんに、HIMITSUBAKOのアイデアをどのようにひらめいたのか、その原点を伺いました。
■ きっかけは「どこに保存すべきか分からない」という悩み
――最初にこの製品を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
最初は、パスワード管理サービスがまだ一般的ではなかった頃、エンジニアとして開発に携わる中で感じた課題でした。
開発を進める中で、パスワードやAWSのアカウント情報など、さまざまな重要情報が発生します。
それらをどこに安全に保存すべきか、常に悩んでいました。
ローカルのPCに保存する方法もあります。
ただ、PC自体のパスワードを忘れてしまったらどうするのか、という問題もありますし、PCは壊れる可能性もあります。もし故障してしまえば、基本的にはリカバリーできず、すべての情報を失ってしまうリスクもある。
それならPCではなく、パブリッククラウドに保存するという選択肢も出てきます。
しかし、クラウドに保存すれば、運用側から情報が見えてしまう可能性もゼロではありません。
そのどちらにも納得できず、「本当に安全な保存方法はどこなのか」が分からなかったんです。
私自身もエンジニアとして、こうした技術の現状を理解しています。現状の多くのシステムでは、運用側がアクセスしようと思えば、基本的にすべての情報を閲覧できてしまう構造になっています。
そのため、結局「どこに保存すべきか」という問いに対して、なかなか納得できるものが見つかりませんでした。
だからこそ、自分だけが安全にアクセスでき、かつ簡単にリカバリーもできる。さらに、クラウドに保存しても運用側からは見えない――
そんなサービスが実現できたらいいと、ずっと考えていました。
■ 既存サービスとの出会いと違和感
そうした課題意識は持っていたものの、当時はそれを解決できるサービスはほとんど存在していませんでした。
そんな中で、最初に出会ったのが海外で開発されたパスワード管理サービスでした。
これは2000年代前半にカナダで開発されたもので、当時はアメリカを中心に徐々に利用が広がっていたものの、日本ではまだほとんど知られていませんでした。
信頼しているエンジニアの知人から紹介を受けて、初めて存在を知りました。
その話を聞いたとき、「まさに今、自分が一番困っていることを解決できるものだ」と感じたのを覚えています。
当初は「これですべて解決できるのではないか」と期待していました。実際にすぐ使い始めてみたのですが、仕組みとしてはエンドツーエンド暗号化やゼロ知識証明といった技術が使われているようでした。それによって、自分以外の誰からも内容を読み取れない仕組みは実現できると説明されていました。
しかし、実際にそのサービスを使ってみると、使い勝手や機能面では十分とは言えず、期待していたほどではありませんでした。
既存のサービスは、主にパスワード管理に特化したものだったため、当時自分が抱えていた課題を完全に解決できるものではなかったのです。
技術的にはエンドツーエンド暗号化やゼロ知識証明が使われていて、安全性は高い。
ただ、機能は主にパスワード管理に特化していて、自分が扱いたいさまざまな情報を柔軟に管理するには不十分だったんです。
例えば、パスワードについては、Chromeなどのブラウザ拡張を使えば、自動で保存や入力ができるため、比較的スムーズに管理できます。
しかし、実際にはパスワード以外にもさまざまな重要情報があります。そうした情報を保存しようとすると、まったくできないわけではないものの、どうしても手間がかかってしまいます。
というのも、あらかじめ用意された決まったフォームに入力することしかできず、柔軟に扱えないためです。その結果、操作にも時間がかかってしまうという課題がありました。
■ 仕事でも、日常でも、
「すぐ保存したい」
「すぐ見たい」
「すぐ共有したい」というリアルなニーズ
仕事中でも日常生活の中でも、こうした重要な情報を保存したいときは本当に「今すぐ保存したい」わけです。今度は、それを参照したいときも同様に「必要なときにすぐ見たい」場面が多くあります。
また、他の人と共有するケースもあり、そうした用途まで含めて考えると、既存のパスワード管理サービスでは十分に対応しきれないと感じていました。実際に様々な既存の類似サービスも試しましたが、入力形式が決まっていたり、操作に手間がかかったりして、スムーズに扱えないことがありました。
■ アイデアが形に
そんな中で、前述の信頼している知人と東京駅近くで食事をしながら話していたときのことです。何気ない会話の中で、
「もっとシンプルに、ノートのように使えて、しかも安全に情報を管理できるサービスがあればいいよね」という話になりました。
私自身もまさに同じことを感じていて、「それが実現できれば理想的だ」と強く共感しました。
そこから、「機密情報を簡単に、安全に扱えるサービスを作れないか」という発想がスタートし具体化していきました。
――まさにご自身が感じていた課題に対する、ひとつの答えが見えた気がしたのですね。
■ アイデアを、技術で現実にする
――Dengさん自身のエンジニア時代の原体験から生まれたアイデアを、技術で育て形にしていった、ということですね。
そうですね。アイデアだけではなく、ゼロ知識証明などの技術と組み合わせることで、「本当に実現できるもの」にしていきました。
頭の中にあった構想が、実際のサービスとして立ち上がった、そんな感覚です。
■ パスワードだけではない「本当に管理したい情報」
――では、HIMITSUBAKOにはパスワード以外の情報も保存できるということですね。どんなものが可能ですか。
そうです。HIMITSUBAKOで扱えるのは、パスワードだけではありません。もちろん、最も多いのはパスワードですが、生活上では家族全員分のマイナンバーカードの番号を職場から聞かれたりすることもしょっちゅうあります。だからといって、現物を自分のところで保管するのは不便ですよね。
ほかにも、番号の保管というといろんな番号があると思いますが、パスポートの情報や有効期限、クレジットカード情報など、重要な番号や情報はたくさんあります。ネットショッピングの際にカードを取り出すのも手間ですし、すぐ手元にLarkがないと困る場面もあります。大事な情報は誰にとってもたくさんありますから。
家族でどこかへ出かけても必要な重要な情報は誰にとっても場面はよくあります。
こうしたさまざまな情報を、一か所で、安全に管理する。そして簡単に参照できる。
そうした体験を実現したいと考えました。そこが、HIMITSUBAKOの出発点かなと思いますよね。
Dengさんの話から見えてきたのは、日々の経験の中にある「ちょっと困った」を見逃さず、自分のニーズから生まれたアイデアを、技術の力で形にするプロダクトづくりです。
その原点にあるのは、「ひとつの場所で安全に管理し、必要なときにすぐ参照できたらいい」という、シンプルで切実な課題でした。
自分自身が最初のユーザーとなり、そのリアルなニーズを出発点にプロダクトへと昇華させていく。
そこから、より多くの人に価値を届けるサービスが生まれていくのかもしれません。
