名前がつなぐ、もうひとつの“ひみつ箱”

  「HIMITSUBAKO」-

  大切なものを、きちんと守る場所。

  そんな想いから生まれた名前です。

  実は、名前がよく似た「もうひとつのひみつ箱」に出会いました。

  箱根に三百年以上、受け継がれる伝統工芸品「寄木細工ひみつ箱」です。

  開いてみた方はいますか。

  木でできた箱。

  けれど、実はなかなか開きません。

  決まった手順を踏んで動かさなければ、開けないしくみのパズルなのです。

  いわば、物理世界のセキュリティ。

  シンプルですが、よく考え抜かれた構造でつくられています。

  これはおもしろそう。ということで、実際に遊んでみることにしました。

  手元に届いた箱を開くと、箱の中から出てきた「寄木細工ヒミツ箱」は想像以上に表情豊かな雰囲気でした。

  異なる材料が持つ色や木目を丁寧に隙間なく組み合わせ、色鮮やかな幾何学模様の精密な柄を織りなしています。この模様をつくるために職人さんが木材を一つずつ組むプロセスが想像されます。

  よく見ると、白、赤、黄色、黒…。寄木細工には、箱根のさまざまな種類の樹木が使われ、色はすべて自然のものですが、その「木の色」も1つではありません。箱根の方によると、少し赤味があるのは「エンジュ」。落ち着いた深みのある色は「神代木」と呼ばれる数百年から数千年前の噴火や大きな地崩れなどの自然災害で地中に埋まった木材です。神代木にも種類があり、「神代カツラ」、「神代タモ」、「神代杉」、「神代ケヤキ」などがあります。加工しやすい部分には「桜」、黄色味がかった褐色から紅褐色は「ケヤキ」、最も白っぽい部分や淡黄色は「ミズキ」など、他にもさまざまな木材の色合いの違いが細かく模様に現れています。薄く削った模様を木製品の外側に貼り付ける手法を「ヅク貼り」、種板を加工して形作る手法は「ムク作り」と呼ばれるそうです。いろいろな木の色が使われていて少し華やかですが、全体としては不思議と統一感があります。どんな空間にもなじみそうで、海外で人気なのも、なんとなく納得しました。

  それぞれの模様のパターンには縁起物としての由来や意味が込められていて、そこに江戸時代から大切に受け継いできたことを感じられます。たとえば、縁起の良い「亀」の甲羅をモチーフに六角形を繋いだ「亀甲」、18世紀の歌舞伎役者、佐野川市松の袴に由来する正方形を並べた「市松」、円を4分の1ずつ重ねた「七宝」と「矢羽根」を組み合わせた「七宝矢羽(しっぽうやばね)」は、魔除けの破魔矢や放った矢が戻ってこない縁起のいい模様とされ円満・調和の意味。子どもの健やかな成長を願う産着にも多く使われる「麻の葉」。升(ます)をずらして幾何学的に組む「切りちがい升(きりちがいます)」。300年前の江戸時代から受け継がれるヒミツ箱について様々な樹木の自然の色と職人としての心技、そのどちらかが消えてしまったら、この幾何学模様は存在しないとお店の方は説明しています。

  この秘密箱のユニークなところは、何といっても「開け方」です。

  スライドさせる回数で難易度が変わります。 今回選んだのは、4寸の4回と、7回、さらに小さな2寸サイズの7回で開くもの。

  中には54回もスライドさせてようやく開くものも並んでいました。模様にもいくつか種類があり、同じパターンがどこまでも続く柄はシックで気に入りましたが、今回は最もスタンダードな定番のデザインを選びました。

  お店の方の話によると、7回の箱を手がけた職人は、特に精度の高い仕事をされることで知られているとのこと。素材も質の良いものを用いているそうです。実際に触れてみると、たしかに細かな部分まで、わずかなズレも感じない完成度にその丁寧さがよく伝わってきます。 使われている材料もいいものだそうです。

  わずかなずれも許さない、緻密なつくり。

  これは、力を入れても開きません。

  ”しくみ”を理解して開くものだそうです。

  一見単純な箱なのに、内側には職人さんの高度な技術があり、ちゃんとした“しくみ”があるのですね。

  ちなみに今回は、名前を入れてくださいました。はっきりと読みやすい整った書体の白い字。自分のためのヒミツ箱として使いやすく「自分に合わせられる感じ」も、

実は私たちの製品と少し似ているかもしれません。

  新しく創業されたIT企業の、生れたてのITサービス新製品「HIMITSUBAKO」は

デジタル上にあるため、見た目もかたちも、木の箱とはまったく違いますが、それでも、大切なものを守り、「正しく使う人だけがアクセスできるしくみ」という点には、どこか通じるものがあります。シンプルに見えて、内側にきちんとしたしくみがあるところも似ています。

  たまたま名前が似ているだけなのですが、デジタル化、グローバル化の中で現代社会から生まれたバージョンのように感じられました。

  以上、思いがけない組み合わせですが、江戸時代から受け継がれる日本の自然が生んだ工芸品の「寄木細工ひみつ箱」と、グローバルなデジタル化社会でコードから生まれた現代のITサービス「HIMITSUBAKO」。

  名前をきっかけに、不思議な縁を感じた話でした。